マイスター試験は100問に及ぶ筆記試験によって行われます。
出題内容は、創設者・村井吉兵衛の人物像や事業の歩み、本館である長楽館(旧村井家別邸)の建築的特徴と歴史、現在のホテル長楽館としての歩み、そして京都の環境や年中行事にまで及びます。
たとえば、村井吉兵衛が「煙草王」と称された実業家であったことは知られていても、村井財閥をどのように築き、たばこ産業の国営化後にどのような事業へと歩みを進めたのか、その志や思想までを知る機会は決して多くありません。
こうした背景を丁寧に学び、理解することが、長楽館の物語を語り継ぐ土台となります。
試験の正答率に応じて「マイスター」、その中でもとりわけ優れたスタッフは「グランドマイスター」として認定されます。
合格者には、その証として専用のピンバッジが贈られます。
このバッジは、知識の量を誇るためのものではありません。
長楽館という建物について、私たちが把握している事実は決して多くはなく、いまなお建物そのものが語りかけてくる痕跡や、残された歴史資料を手がかりに、調査と理解を重ねているさなかです。
だからこそ、マイスター認定は「すべてを知り尽くした証」ではなく、この場所と向き合い、学び続け、語り継いでいく姿勢を託された証でもあります。
館内でこのピンバッジを身につけたスタッフを見かけた際には、どうぞお気軽に長楽館についてご質問ください。
確定した史実だけでなく、調べ、考え、受け継ごうとしている「今の物語」も含めて、この建物の魅力をお伝えします。


2024年、長楽館(旧村井家別邸)は国の重要文化財に指定されました。
建物は、ただ保存されるだけではなく、人の記憶と言葉によって生き続けていきます。エピソードを知り、誰かに伝えたいと思い、語り続けていくこと。その積み重ねこそが、歴史的建造物を未来へとつなぐ力になると、私たちは考えています。
長楽館マイスター制度は、歴史を守るための制度であると同時に、歴史を「今」に生かすための取り組みです。
この場所に流れる時間と物語が、訪れた皆様の記憶に静かに残るように、ホテル長楽館ではこれからも歴史を語り継いでいきます。