SEASONAL
JOURNAL
WINTER 2025

「迎賓の間」の家具たち 「迎賓の間」の家具たち

CHOURAKUKAN LEGACY

装飾

「迎賓の間」の家具たち

2024年12月9日、ホテル長楽館の本館「長楽館(旧村井家別邸)」が、国の重要文化財に指定されました。指定の対象は建物のみならず、石造りの正門や塀、館内に残る家具51点にも及びます。これらの家具等は「附(つけたり)指定」と呼ばれるもので、建物と合わせて歴史的価値を認められたものです。つまり、当時の空間の意匠や設えを今日まで伝える、建築文化の重要な構成要素として評価されたのです。建物と家具を併せて附指定とする事例は全国的にも極めて珍しく、京都市の積極的な文化財保全の取り組みを象徴するものといえるでしょう。ここでは、その中でも特に来賓をもてなすために設えられた「迎賓の間」に残る家具の数々をご紹介します。
Feature 1
ロココ様式の家具

「迎賓の間」は、かつての賓客をもてなす空間として設えられ、現在はアフタヌーンティーやご宿泊者の朝食専用のお部屋として使用されています。
室内に配されたテーブルや椅子、ソファの多くは建物とともに附指定を受けた家具です。なかには明治の創建当初からこの「ドローイングルーム」で実際に使用されてきたものも。
曲線を基調としたシャンデリアや漆喰彫刻等、ロココ様式の意匠が特徴の一室で使用されていた家具もまた、ロココ様式の繊細で華やかな造りものです。お部屋に合わせた家具が空間を形づくり、迎賓の間に漂う優美な品格をいっそう際立たせています。100年以上の時を経てなお、同じ調度品がこの部屋でお客様を迎え続けていることは、長楽館ならではの特別な魅力です。

アフタヌーンティーのティーテーブル アフタヌーンティーのティーテーブル
Feature 2
アフタヌーンティーのティーテーブル

マントルピース前に置かれた磨き上げられたテーブルや肘掛け椅子は、いずれも附指定を受けた家具です。ガラスの上にティースタンドやカトラリーが並び、窓辺から差し込む柔らかな光が室内を包みます。歴史を感じる空間の中で、ゆったりとお茶の時間を過ごしていただけます。

Feature 3
村井吉兵衛の書斎机

「迎賓の間」には、実は長楽館の創設者・村井吉兵衛が使用していた書斎机も設えられています。
現在は、カトラリーやソーサーなどを収納するサービステーブルとして活用されており、日々アフタヌーンティーの場を支える現役の家具です。堅牢な造りと繊細な装飾を併せ持つその机はお客様をもてなす空間の一部として息づいています。
こちらの机も建物とともに附指定を受けており、明治期の家具づくりの確かさを今に伝えています。