本館1階で待合用にご案内している、美しい植物の繊細な装飾が施されたルネサンス風の備え付けの長椅子もまた、そんな家具のひとつです。長楽館では文化財を本来の目的に沿って活用しながら保存し、次の時代に継承していく「動態保存」を実施しています。「文化財に腰掛ける」という体験の提供が叶うこともまた、その一貫です。
当時喫煙の際に使用されていた座椅子で、座面には大理石、木部の装飾には白蝶貝で螺鈿の装飾が施されています。こちらは実際に腰掛けることはできませんが、一級の細工を是非間近でご覧いただきたい逸品です。中国風の装いが部屋のオリエンタルな雰囲気に調和しています。長楽館を建てた村井吉兵衛は煙草で財を成した実業家。館の中央に位置する喫煙室の装飾には一等のこだわりがあったのかもしれません。
一対の象牙のミニチュア装飾です。象牙の険しい岩山や、七層塔をはじめとした中華風の建築、そしてそれらの建物の中には中国風の衣装を纏う人々。植物にはメノウなどの鉱物が使用されており、仙境のようにも見えます。物語性豊かなミニチュアが、当時この部屋で煙草を味わう賓客の目を楽しませていたのかもしれません。
19世紀創業の英国家具メーカー・メープル社(Maple&Co.Ltd.)による洗面台で、現在は絶滅危惧種に指定されている希少性の高い銘木ブラジリアンローズが使用されています。表面の模様は、木材に異なる色の木材を嵌め込む象嵌(インレイ)の装飾技法が使用されており、職人技が感じられる美しい装飾が現在も色鮮やかに残ります。